令和3年10月宅建試験 問8(土地工作物責任)問題
Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、令和3年7月1日に甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした場合(以下この問において「本件事故」という。)における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- Aが甲建物をCから賃貸している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしなかったとしても、Bに対して不法行為責任を負わない。
- Aが甲建物を所有している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしたとしても、Bに対して不法行為責任を負う。
- 本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。
- 本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。
本問は「土地工作物責任」と「事項の消滅」がミックスされた問題だったね。
令和3年10月宅建試験 問8(土地工作物責任)解答と解説
正解…1
問8-1 解説
1. ×誤り
工作物の設置や保存に瑕疵があり他人に損害が生じた場合、被害者はまず占有者に損害賠償請求をします。
工作物責任の原則は「占有者が必要な注意をしていなかった場合、占有者が責任を負う」です。
本問ではAは建物の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしていませんでした。
つまり責任はAにあります。
よってこの問いは誤りとなります。
問8-2 解説
2. ○正しい
問1で解説したように、工作物責任の原則は「占有者が必要な注意をしていなかった場合、占有者が責任を負う」です。
ただし占有者が損害の発生を未然に防止するために必要な注意をしていた場合は占有者は責任を免れ、所有者が責任を負うことになります。
本問でAは損害発生の防止に必要な注意をしていますが、Aは占有者であり所有者でもあります。
つまり責任はAにあります。
よってこの問いは正しいとなります。
問8-3 解説
3. ○正しい
本問は消滅時効を問う問題でした。
消滅時効は物を壊したとき(物損)と、人の生命又は身体の侵害(人損)の場合で内容が異なります。
通行人Bはケガをしているので人損にあたります。
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権(人損)の消滅条件は下記の通りです。
- 権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
- 権利行使できる時から20年間行使しないとき
よってこの問いは正しいとなります。
問8-4 解説
4. ○正しい
問8-3で解説した通り、Bの損害賠償請求権は「権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」に時効によって消滅します。
よってこの問いは正しいとなります。