宅建過去問 令和3年10月 問3(地位の相続)
個人として事業を営むAが死亡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはいくつあるか。なお、いずれの契約も令和3年7月1日付けで締結されたものとする。
ア. AがBとの間でB所有建物の清掃に関する準委任契約を締結していた場合、Aの相続人は、Bとの間で特段の合意をしなくても、当該準委任契約に基づく清掃業務を行う義務を負う。
イ. AがA所有の建物について賃貸人Cとの間で賃貸借契約を締結している期間中にAが死亡した場合、Aの相続人は、Cに賃貸借契約を継続するか否かを相当の期間を定めて催告し、期間内に返答がなければ賃貸借契約をAの死亡を理由に解除することができる。
ウ. AがA所有の土地について買主Dとの間で売買契約を締結し、当該土地の引渡しと残代金決済の前にAが死亡した場合、当該売買契約は原始的に履行が不能となって無効となる。
エ. AがE所有の建物について貸主Eとの間で使用貸借契約を締結していた場合、Aの相続人は、Eとの間で特段の合意をしなくても、当該使用貸借契約の借主の地位を相続して当該建物を使用することができる。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
この問題は準委任契約、賃貸借契約、売買契約、使用貸借契約の4つの契約の「地位の相続」が横断的にまとめられていたね。
被相続人が死亡した場合、それぞれの契約で相続されるケースとされないケースがあるのでいかに見極められるかがポイントだよ。
宅建過去問 令和3年10月 問3(地位の相続)解答と解説
正解は…4
問3-ア 解説
ア. ×誤り
この問題は準委任契約の相続についてです。
突然「準委任契約」という単語が出てきて惑わされてしまった人もいるんじゃないでしょうか?
ここで「準委任契約」を簡単におさらいしましょう。
準委任契約とは、特定の業務を遂行することを定めた契約のことです。
あくまで「業務の遂行」が目的であり、仕事の結果や成果物に対して完成の義務は負いません。
受注側は契約期間内に依頼された業務を遂行することで報酬が支払われます。
本問では、Bと準委任契約をしていたAが死亡した場合、Aの相続人は死亡したAの義務を相続するのか否かが問われています。
ちなみに準委任契約は(委任契約と同じく)一定の自由が生じると契約は終了となります。
委任者(依頼した人)
- 死亡
- 破産手続開始の決定
受任者(依頼を受けた人)
- 死亡
- 破産手続開始の決定
- 後見開始の審判
本問では受任者であるAが死亡しているので準委任契約は終了となります。
よってこの問いは誤りとなります。
問3-イ 解説
イ. ×誤り
この問題は賃貸借契約の相続についてです。
貸主(大家)であるAが死亡した場合、自動的に賃貸人たる地位を相続人が承継します。(ちなみに敷金返還債務もそのまま相続人が承継します。)
この時、相続人がそれまでの借主Cを追い出せるか否かという問題ですが、借主は借地借家法によって守られているので再契約を結ばなくてもそのまま相続人との契約は存続しています。
つまり相続人はCに契約継続の催告をすることも、ましてや契約解除をすることもできません。
よってこの問いは誤りとなります。
問3-ウ 解説
ウ. ×誤り
この問題は売買契約の相続についてです。
売買契約締結後、決済・引き渡し前に買主が死亡した場合、その地位(買主としての権利義務の一切)は相続人に承継されます。(民法第698条)
つまり本問はAが死亡しても相続人がその地位を承継するので原始的に履行が不能とはなりません。
よってこの問いは誤りとなります。
問3-エ 解説
エ. ×誤り
この問題は使用貸借契約の相続についてです。
「使用貸借」は一般の賃貸借とは異なり、借主が無償で物を借りることです。
有償で借りる賃貸借とは異なり、使用貸借はタダで借りている以上立場は弱く、借主が死亡した場合、使用借権は相続されず使用貸借契約は終了となります。
つまり本問では借主Aが死亡した時点で使用貸借契約は終了となり、相続人に承継されることはありません。
よってこの問いは誤りとなります。