宅建過去問 令和3年10月 問1(同時履行の抗弁権)問題
次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例および下記判決文によれば、正しいものはどれか?
(判決文)
賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に前期の敷金残額を返還すれば足りるものと解すべく、したがって、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解するのが相当であり、このことは、賃貸借の終了原因が解除(解約)による場合であっても異なるところはないと解すべきである。
- 賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はない。
- 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものといえる。
- 賃貸借における敷金は、賃貸借の終了時点までに生じた債権を担保するものであって、賃貸借人、賃貸借終了後賃借人の家屋の明渡しまでに生じた債権を敷金から控除することはできない。
- 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合する。
いわゆる家屋明渡債務と敷金返還債務の問題だね!
いきなり「留置権」とか出てきて「あれっ???留置権ってなんだっけ…???」と焦った人もいるんじゃないかな?
宅建過去問 令和3年10月 問1(同時履行の抗弁権)解答と解説
正解は…1
問1-1 解説
1. ○正しい
そもそも「留置権」とは何だったか?みなさん覚えていますか?
留置権とは「Aさんの物を占有しているBが、その物の債権の弁済をAさんから受けるまで占有しつづけることができる権利」です。
今回の問題に当てはめれば、「賃貸人の家を占有している賃借人が、敷金を賃貸人から返してもらうまで占有しつづける権利」の余地はない、という意味です。
判決文には「賃貸人は(中略)賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解す」と書かれています。
つまり、賃借人が先に家屋を明渡した後に賃貸人は敷金を返還すれば良い。
よって、先ほどの留置権の余地はない。この問は正しいとなります。
問1-2 解説
2. ×誤り
「双務契約」とは、お互いに対価性のある債務を負担する契約です。
双務契約には「同時履行の抗弁権」が認められています。
「家屋明渡債務」と「敷金返還債務」の同時履行は成り立ちませんので、本問は誤りとなります。
問1-3 解説
3. ×誤り
本問は、簡単に言えば「部屋を借りてた人(賃借人)が契約期間中に部屋を汚したりしたら、それにかかる修繕費用ははあらかじめ敷金から差し引くことはできない」という意味です。
そんなはずないですよね?この問題は常識的に考えれば誤りだとわかります。
問1-4 解説
4. ×誤り
本問では「賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定する」と書かれていますが、判決文で「賃貸人は(中略)賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解す」と書いてある通り、同時履行の関係は成り立ちません。
よって本問も誤りです。